スタンスミスの「World Championship 2017」コラム 第3回

12月14日(木)~17日(日)にシンガポールのKallang Theatre (カランシアター)で開催されていた、『Vainglory』の世界大会を振り返るスタンスミス(岸 大河)氏のコラム第3回を掲載。優勝予想や実際の大会結果を踏まえ、グループステージを振り返ろう。

2017/12/22 15:21

「World Championship 2017」コラム 第3回

12月17日(日)、Vainglory World Championship 2017が閉幕した。大会の結果は皆様既にご存知のことと思うが、ここは私見を交えつつ、あらためてグループステージから振り返りたいと思う。

グループステージとは

グループステージとは読んで字の如く、A〜D4つのグループステージにチームが分けられ、Bo2(2試合のみ)のルールで総当たりを行い、上位2チームが決勝トーナメントに進出するという仕組みだ。3チーム中の上位2チームであれば、合計4ラウンド戦う中で2ラウンド勝利すれば三つ巴以上は確定する。実力のあるチームは間違いなく予選落ちしないルールと言えよう。
さて、そのグループ分けの結果はご覧の通り。ワイルドカード枠として出場したDetonatioN Gaming(日本)が相対したのはG2 esports(ヨーロッパ)とKraken(中国)であった。
他グループと比較をすれば予選通過は容易であると予測した日本のVaingloryファンは多かったはずだ。無論、私もその一人である。

Cグループは昨年度優勝チームROX Armada(韓国)と対等に戦えるTribe Gaming(北米)の、どちらが1位抜けできるかが決勝トーナメントに響くであろうと予想。
Dグループは大混戦の予感はしたが、Hunters(中国)が実力的には辛そうな印象だった。

優勝予想は3チームのいずれか

個人的な優勝予想は、ACE Gaming・Cloud9・Tribe Gamingに絞られていたが、正直なところ、どのチームが勝ってもおかしくない。EU・SEA・CNに関しては未知数なので、チャンスはあるものの安定感はないだろうと見ていた。
ACE Gamingは言わずもがな、ハイレベルな環境下にあるEAを代表するチームだ。レーンのcreationを中心に個人技能に定評のあるメンバーが揃い、圧倒的な実力と安定感を持つ。大会シーンに注目してきたVaingloryファンであれば、今更説明が必要なチームではないだろう。まさに優勝候補筆頭と言える。
Cloud9北米の超有名プロesportsチームで、『League of Legends』をはじめとして多くのタイトルで実績を残しており、元Nemesis Hydraのメンバーが加入したのがVainglory参入の発端だ。gabevizzle、Oldskoolと、私がVainglory World Invitationalで出会ったメンバーゆえに思い入れもあるが、チームの完成度は凄まじいものがある。

Vaingloryサービス開始当初から活動していたiLoveJosephがいることで、ヒーロープールやロール変更可能な彼らは、Vainglory自体の知識やテクニックで他地域に対して大きなアドバンテージを有しているのだ。NA Vainglory8 でも安定感のある戦いを見せており、若きOldskoolのレーンを止めなければ、瞬く間に試合の流れが決まってしまうに違いない。
Tribe GamingはクラッシュロワイヤルのYoutuberとして有名なChief Patがオーナーを務めるチームだ。昨年活躍したHammers Velocityからの移行組が多い。RAGEエキシビジョンマッチにHammers Velocityとしてgabevizzleと共に来日経験もあるDNZioが所属しており、Oldskoolが若きレーナーで有名になった矢先に、突如現れた天才肌の最年少レーナーだ。前に出る事を恐れず堂々とした受け答え、母親までもが選手活動を支えるDNZioの存在は日本のVaingloryファンを大いに驚かせたであろう。

そしてなによりTTigersの出場である。チームと出場機会に恵まれず、知る人ぞ知るスーパープレーヤーだと個人的には思っている。直接会ったことはないが、実は私は彼のファンなのだ。2015年よりLiberation Xに所属していたTTigersの爆発力はNA No.1レーナーだと信じていた。昨年私が実況を務めた世界大会ではHammers Velocityのアナリストとしても参加しており、「TTigersは出場しないのか!」とインターバル中に言葉を発した記憶がある。
その彼がJungleのポジションになり、どこまで世界大会で魅せてくれるのかが注目であった

各チームの熱量や雰囲気は、大抵選手紹介やオープニングセレモニーで伝わってくる。まさに競馬のパドックだ。緊張、平常運転、楽しくチームでまとまっているチーム、慣れを感じさせるチーム、各個人のキャラはあれども目立ちたがり屋がいるチーム。各チームの特徴が手に取るようにわかるので、是非ともアーカイブでご覧いただきたい。既に勝敗は決しているものの、結果を踏まえて見ると、また違った面白さがあるはずだ。

グループステージ決着

各チーム熱戦の末、グループステージの結果はこのようになった。未知数のEU、SEAが不安定ながらも大健闘したと言える。CNも独特な戦い方がやっと花開いた印象だ。不調であったTSMは、悲しいかな予想通りの結果となった。一方EAはACE Gamingのみが残る形となり、EA1強時代が終焉を迎えるのを覚悟したファンもいたのではないだろうか。

そして我らが日本、ワイルドカード枠のDetonatioN Gamingである。1勝3敗でまさかのグループステージ敗退だ。序盤から押される展開にしがみ付くことができず、飲みこまれてしまった。pickやプレイングの問題ではない。これは邪推かもしれないが、わずかでも相手を見下していたゆえの準備不足ではないかと感じた

対戦相手となったKrakenとG2 esportsも実力のあるチームだが、DetonatioN Gamingなら対等以上に渡りあえたはずだ。過去のEAの悪い癖で堅実な構成しかせず、Ban/Pickが非常に読みやすい。周回や当たり場所もそうだろう。

これは余談になるが、あらゆるゲームでも同様の事が言える。一度勝ちパターンを覚えると大抵動きがテンプレート化されて意外さや独創性を失ってしまう。それでも勝てるうちはまだいい。ただ、相手が極端なド素人か格上の場合、想像をはるかに超えた動きをされてパターンに嵌めづらくなる。前者であれば歯車が狂ったところでゴリ押すだけで終わるが、後者の場合は相手の術中に嵌められているという場合が多い。

解決策を見出そうとするが、もがけばもがくほどアリ地獄のように飲み込まれていく。練習から大会までに新たな動き、試み、修正を積み重ね、堅実さの中に柔軟性が身につかなければ世界の頂点には程遠いだろう

DetonatioN Gamingの再起を願って

日本屈指のプロチームでありながら、選手の育成が追いついていないのは悔しいの一言だ。前回のコラムでも綴ったが、”ワイルドカードという名の救済措置で上がってきたチーム”そのままの結果となってしまった

メンバーたち自身にも思う所はあるだろう。それ故これは邪推かもしれないが、あえて苦言を呈させてもらう。人気者になりたい。技術を学びたい。叩かれたくない。世界大会に出たい。賞金が欲しい…… プロ選手であるからには、そうした甘い考えはすぐさま捨て、”勝つ”ことに拘ってもらいたい。勝ち続ければ、そうしたものは後からついてくる。本大会の結果は彼らにとって勝つ為の方法を見直す転機だ。正しい方向に正しい努力を注ぎ、目標に向かって前を向いて進むことさえ出来れば、この失敗は将来きっと役に立つだろう。

己への厳しさ、周囲の環境、強豪たちとの凌ぎ合い、あらゆる逆境を乗り越える覚悟がなければ競技シーンに居続けることはできず、セカンドキャリアにもつながらないだろう。そこがプロの世界の面白さであり、怖さだ。全世界で勝つチームは1チームのみ。他は敗者。だからこそ何としても頂点に立ちたくなる。そうした魔力のようなものが「World Championship」という言葉にはあると思う。

DetonatioN Gamingを超える逸材が日本から誕生する可能性ももちろんあるのだが、来年こそは自らの手で世界大会への切符を手にし、3度目の正直として納得のいく戦いを見せてほしいと願わずにはいられない

次回は本大会結果と今後のメインコンテンツとなる5V5について書かせていただく予定だ。
Vaingloryファンの皆様が、アーカイブをご覧になる際の余禄として本コラムを楽しんでいただけたら幸いである。

StanSmith / 岸 大河 プロフィール

1989/6/21 ゲームキャスター/LogicoolGブランドアンバサダー
国内のesports大会やゲームイベントの実況・MCを中心に活躍している。世界大会の日本語実況などの経験も豊富。もともとはFPS・MOBA・スポーツのジャンルで国内外の大会に出場していたトッププレイヤーでもある。

ただのアナウンサーや実況者ではなく、選手としての大会経験とゲームへの深い理解を持つことを一番の武器としている。ゲーム初心者から上級者まであらゆる視聴者が楽しめるように言葉巧みに、必要なときには噛み砕いてゲームや試合の魅力を伝える能力が高く評価されている。

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