スタンスミスの「World Championship 2017」コラム 第4回

12月14日(木)~17日(日)にシンガポールのKallang Theatre (カランシアター)で開催されていた、『Vainglory』の世界大会を振り返るスタンスミス(岸 大河)氏のコラム第4回を掲載。本コラムも今回で一区切り、決勝トーナメントの結果とついにベールを脱いだ「5V5モード」についての解説を見ていこう。

2018/01/15 16:36

「World Championship 2017」コラム 第4回

「World Championship 2017」について書き綴ってきた本コラムも今回でひと区切り。

グループステージは2016年度の世界大会と比較すると、EA以外の地域のレベルアップが顕著に現れた結果となった。それでは決勝トーナメントについて詳しく見ていこう。

Day2は波乱の展開に

Day2の結果はこのようになった。いい意味で予想を裏切る波乱の展開である。
ここでの注目は南アメリカ(SA)代表paiN Gamingと、東南アジア(SEA)代表Impunityだろう。
paiN GamingはVIPL Season3に出場した経験もある、元Amaterasu GamingのUrameshiYusuke、SrMusTer、Mirotic、JesuinoFeraの4名で長期間活動を続けてきたチームである。昨年度RED Canidsに加入し世界大会に出場したが、他地域との実力差に押しつぶされる結果となってしまった。

スプリングシーズンより、長年活躍をしていたUrameshiYusukeに代わりSrMusTerをレーンへ。新たに加入したFalconDorianをジャングルに配置することを決断。脱退したUrameshiYusukeはZonic eSportsに移籍している。
世界大会前にRED CanidsのすべてのメンバーはpaiN Gamingに移籍、本大会に臨んでいた。独特なリズムかつアグレッシブなプレーで勝ちをもぎ取りにいく姿勢でグループステージを突破、SAの実力を全世界に見せつけたが、Day2では優勝候補のACE Gamingに惜しくも敗れる結果となった。
ただ、あのACE Gamingに2本取れた結果はアジアの実力に近づいている証拠だ。2018年で1番期待できるチームと言って差し支えないだろう。

ImpunityはROX Armada、Tribe Gaming相手に共に1-1という結果で2位通過。強豪ROX Armadaの敗退は全世界に衝撃を与えたに違いない。
このImpunityだが、Infamousとして活動していたQuatervois、deftQ、INKEDを中心に構成されたチームで、日本でも勇名を轟かせているspaghettiに代わりBluexidyがレーンに配置されていた。
序盤~終盤まで安定感のある戦いを見せ、集団戦の立ち位置から個人技まで世界トップレベルといえる仕上がり。DetonatioN Gamingを破り、中国でも名前が通ったジャングルのBaBaLaが所属するTeam Kraken相手に3-1で決着。危なげなくベスト4入りを果たした。

栄冠を勝ち取ったのは「Tribe Gaming」

準決勝・決勝の結果はこちら。
Tribe GamingがPickで優位を取り、接戦の末にACE Gamingを下して優勝を果たした
チャーンウォーカーはEAで一時流行したヒーローだが、NAでは現環境でも通用するという認識での採用だったのだろう。

本大会の出場チームが発表された時、平均年齢16歳のTribe Gamingが優勝すると予想していたEAプレーヤーが、果たしてどれだけいただろうか?低年齢層で編成されたチームは爆発力はあるものの、安定感に欠けるというのがよくあるパターンだ。一度のミスでもチームの士気が下がり、箍が外れるようにたやすくペースを乱してしまう。
そんな先入観を打ち消してくれた安定感はどこから生まれたのか。それは、圧倒的な練習量をこなしてきたという自信。そしてオフライン大会経験が豊富であることが要因ではないかと私は見ている。
一つ一つの行動に意味を見出し、勝機を得るための戦術を実行していく丁寧な試合運び。ここ1年、EAとは異なる群雄割拠のNAで切磋琢磨した成果と言えよう。

ベールを脱いだ「5V5モード」

さて、本イベントではついに5V5モードのお披露目も行われた。第1回のコラムにも書いたが、概ね筆者が予想した通りの展開になる模様だ。既存の3V3は本大会でひとまず区切りとなり、2018年より5V5へのシフトが進む。

リリース当初は3V3の独自路線でMOBAジャンルに新たな風を吹かせたが、これからは定番の5V5への回帰を目指す。図らずもこれは、アジア圏で流行している『王者栄耀』などに挑戦状を突きつけたような形である。
現在はまだアーリーアクセスの段階だが、私が思うに完成度とバランスは納得のいく内容だった。従来よりプレイ人数が増えたことで端末への負荷が懸念されたが、問題なくプレイできるようだ。それどころか120Hzにも対応している。
無論課題はある。
第一に観戦画面。5人分のインターフェースを表示するには相当画面を圧迫している状況だ。ユーザー主催の場合は、PCではなくモバイル端末で観戦画面を配信する為、観戦操作がしやすいのかは気になるところ。

ヒーローのバランスもしかり。もともと3V3を想定して作られたアイテム能力、ヒーローパワー、スキルバランスだと思うが、5V5でそれがどのように調整されるかは疑問が残る。ぱっと見、全体的なヒーローの体力が上昇されているのは確認できた。

ウォートレッド・再生の泉・クルーシブルを積んだキャサリンLv.12が約4800の体力。
従来の体力値だと、さすがに柔らかいという判断か。もし、攻撃力は据え置きで体力値のみがあがっていた場合、効果的なダメージ源としては割合ダメージだろう。
フォートレスに限っては恐らく、アルティメット時に登場する狼の量は変わっていない気はするが...。ただ、奥深くまで潜り込むことができれば、遠距離を得意とするキャリーを瞬間的に落とし、人数差で勝っていく構成も考えられそうだ。だが、もし全員クルーシブルを積んだとしよう。タイミングよく5人が使用すると約5秒CC無効化される計算となる。Vaingloryプレーヤーなら、その5秒が相手からすると絶望の5秒になることが理解できるだろう。3V3より難易度があがっていることに疑いの余地はない。

……と様々な想像を膨らませてくれる5V5。実は筆者もまだ直接触れていない。ただ、個人的に気になっているヒーローはアダージオだ
長射程の攻撃範囲は、レーンで大活躍する可能性を秘め、エナジーを供給し続けるヒーローパワー『秘術の再生』を持つ。『炎の賜物』と『怒りの使者』を組み合わせることで、バーストダメージが期待できる。キャリーと同行することにより、ダメージトレードで優位に立ち、金銭差を生ませる要因になるだろう。
集団戦においては、タンクと合わせることによって相当なアドバンテージを握る可能性もある。

本音を言ってしまえば、最近の競技シーンではあまり目にしないアダージオの勇姿を見たいだけなのだが...…。

Vainglory新生に向けて

ゲームロビー画面のリニューアルや、アーリーアクセスも始まったVainglory。勝負勘を取り戻すべく、筆者も年始から少しずつプレイを再開している。3V3だろうと5V5だろうとVaingloryには変わりない。モバイル端末で体験できるMOBAとしては断トツのゲーム性とクオリティだ。このコラムをご覧いただいている皆様はVaingloryに強い興味があるか、愛してやまないプレーヤーだろう。

より多くの人に遊んでほしい、流行ってほしい!と願うのであれば、小さなイベントを開いていこう。初心者講座の配信でも構わない。公式任せや誰かの追従ではなく、自ら何か行動を起こすことが大事なのではないかと私は思う。その積み重ねが日本プレーヤーの実力の底上げ、ひいてはVainglory8の盛り上がりに繋がってくるはずだ。

2018年はVaingloryにとって新生の年となる。
最高のゲーム体験を共有するプレーヤー・コミュニティを大切にして欲しいと切に願う。

StanSmith / 岸 大河 プロフィール

1989/6/21 ゲームキャスター/LogicoolGブランドアンバサダー
国内のesports大会やゲームイベントの実況・MCを中心に活躍している。世界大会の日本語実況などの経験も豊富。もともとはFPS・MOBA・スポーツのジャンルで国内外の大会に出場していたトッププレイヤーでもある。

ただのアナウンサーや実況者ではなく、選手としての大会経験とゲームへの深い理解を持つことを一番の武器としている。ゲーム初心者から上級者まであらゆる視聴者が楽しめるように言葉巧みに、必要なときには噛み砕いてゲームや試合の魅力を伝える能力が高く評価されている。

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